平成28年度文化庁委託事業 劇場・音楽堂等基盤整備事業"情報フォーラム"
「劇場・音楽堂等における東京オリンピック・パラリンピック文化プログラムを考える」
パネルディスカッション 各団体報告3
障害者プログラムの考え方と事例
鈴木京子
国際障害者交流センター ビッグ・アイ
事業プロデューサー
(1)ビッグ・アイの理念と実績
大阪府堺市にあるビッグ・アイは、平成13年に「国連・障害者の10年」を記念し、障害者の「完全参加と平等」の実現を図るシンボル施設として、厚生労働省により設置されました。
ビッグ・アイは下記の基本理念のもと、文化事業を行う福祉施設です。
- 障害者が主役
- 芸術文化活動や国際交流を通して障害者の社会参加を促進
- 多くの人に親しまれる施設
施設は全てバリアフリーで、多目的ホールは最大1500席、車いす席200席(車いす席利用の場合の客席は約1000席)、玄関からステージ上まで車いすのまま行くことができます。他に大中小の研修室、和洋の宿泊室やレストランがあります。
平成27年度の実施事業数は47と、昨今は予算の関係で減少しているものの、障害者参加率は年々上昇しており、昨年度は参加者合計27,188人のうち53.4%が障害者とその支援者でした。仮に53.4%のうち半数が支援者(健常者)としても、障害者の割合は26%を超えており、人口の6%といわれる障害者の比率を大きく上回っています。ここからも、障害のある方の文化受容へのニーズは高まってきていることがわかります。
(2)鑑賞サポートと表現活動サポート
事業コンセプトは、国連・障害者の権利憲章に則り「障害は人にではなく環境にある」と考え、何が必要か、どのようにすれば誰もが参加できるかを〈想像〉し、〈創造〉することです。
① 誰もが利用しやすい施設・設備 | 段差の解消/車いす席/多機能型トイレ/通路幅の確保など |
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② 誰もが利用しやすい制度、運営 | 多様な予約や申し込み方法/視聴覚障害者への情報保障、提供など |
③ 障害者への理解 | 職員、ボランティアに向けての講座、研修会実施など |
具体的な活動として、障害の種類を問わずどんな人でも公演を楽しめる鑑賞サポートを行っています。これには、車いすへの対応だけでなく、聴覚障害者(リアルタイム字幕、手話通訳など)や、視覚障害者(点字や拡大文字のパンフレット、盲導犬同伴席など)のための多様なサポートが含まれます。
さらに、知的・発達障害者の多くが地域の劇場を利用できていない現状に対し、マナーを学びながら公演を鑑賞する劇場体験プログラムは、毎年500人を超える申し込みがある人気企画となっています。
鑑賞サポートと同じ視点での表現活動のサポートにも力を入れており、米国の劇団とのミュージカルワークショップや、聴覚障害者と健聴者のダンス作品の共同制作などを行っています。
(3)文化プログラム実施に向けて
文化プログラムにおいて、障害者による芸術活動が全国で展開され、良きレガシーとなることが期待されていますが、芸術分野のうち造形美術以外の舞台芸術や音楽の分野は、個別の小規模な活動のレベルに留まっている現状があります。これらの分野の表現者や支援者の育成を図るとともに、障害者の舞台芸術活動にかかわる全国的かつ横断的な支援体制を構築していくことが重要です。
ビッグ・アイでは今年度、全国の官民劇場・文化施設および障害者と障害者を含む表現活動団体に対する実態調査を行います。これによって課題を可視化し、その後3年間の文化プログラムを通じて、障害者が表現者・鑑賞者として参加するための人・ノウハウ・技術を全国に波及させて、レガシーとしていく計画です。全国の劇場・音楽堂等の皆様もご協力をよろしくお願いします。
平成28年度文化庁委託事業 劇場・音楽堂等基盤整備事業"情報フォーラム"
開会挨拶
基調報告
パネルディスカッション
- 東京都が主導する文化プログラムの考え方と取組み
- アーツカウンシルの設立に向けた新潟市の取り組み
- 障害者プログラムの考え方と事例
- 文化の力による心の復興事業 2~3の事例から
- 地方劇場における文化プログラムの考え方