平成28年度文化庁委託事業 劇場・音楽堂等基盤整備事業"情報フォーラム"
「劇場・音楽堂等における東京オリンピック・パラリンピック文化プログラムを考える」
パネルディスカッション 各団体報告2
アーツカウンシルの設立に向けた新潟市の取組み
塚原 進
新潟市
文化スポーツ部 文化創造推進課 参事・課長
(1)新潟市の文化政策 これまでの取組み
新潟市は2005年の「平成の大合併」を経て15の市町村がひとつになり、2007年に本州日本海側初の政令指定都市となりました。広域合併によって市域が広がり、人口が増え、多様な文化という「宝物」が増えた反面、新しい新潟市民の一体感の醸成に向けて、共通の文化的アイデンティティを模索し、共有していくことが急務でした。
そのための試みとして、2009年に始まった「水と土の芸術祭」をはじめ、新潟の食や酒、踊り、マンガ・アニメ、音楽、伝統芸能など地域の文化を掘り起こし光をあてる多彩なイベント、プロジェクトを積極的に実施してきました。これらの取組みを通じて、近年は、文化庁長官表彰(文化芸術創造都市部門 2012年)や、東アジア文化都市選定(2015年)など、「選ばれる都市」に成長してきたと感じています。
(2)なぜ、アーツカウンシルをつくるのか
文化創造都市としての取組みが進む一方で、市の文化政策の弱みも浮き彫りになってきました。第一に、文化行政に関わる専門人材等の不足から、国際的な大規模事業を含む業務の高度化、職員の負担増、人事異動によるノウハウ、ネットワークの散逸などの課題が生じています。加えてPR力の不足から、いいものがあるのに伝わらない、市民自身が魅力に気づいていない。さらに、産業、観光、福祉、教育等の他分野との連携や、PDCAサイクルの徹底も足りていません。これらの課題を踏まえ、文化施策の推進体制を強化する必要があることから、アーツカウンシル設立への期待が高まっていました。
(3)アーツカウンシルで何をしたいのか
アーツカウンシル新潟を設立するにあたり、「創造交流都市にいがた『文化プログラム』推進体制計画」を策定し、文化庁に補助金を申請しました。申請内容は、オリンピック文化プログラムや、その後の国際発信・国際交流を見据えた「新潟市文化創造都市ビジョン」の改訂と、その着実な推進のための体制整備です。具体的には、アーツカウンシルと、行政内の文化創造推進本部、さらに外部有識者会議である文化創造推進委員会が三位一体となる体制です。
アーツカウンシル新潟の機能は、文化芸術活動の支援、調査研究、情報発信、企画立案の4つです。初年度の人員は専任が4人、文化創造推進課から2人兼務をして6人体制となる予定です。専門人材の公募には県内外から延べ43人の応募者が集まりました。
(4)これからの課題
アーツカウンシル設立に向けた課題のうち最大のものは、文化庁の補助期間および2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会終了後の財源の確保であり、これに対して現在、市の予算確保のための議会説明、活用可能な補助金の研究などを行っています。次いで、有能な人材の確保・育成、そしてアーツカウンシルの活動の成果指標、スタッフの人事評価などの手法も大きな課題であり、他都市のアーツカウンシルとの情報交換などを行っています。
(5)文化プログラムに向けた取組み
新潟市の文化プログラムに向けた取組みには、まず10月に行われる日・中・韓による国際演劇祭「第23回BeSeTo演劇祭 新潟2016」があり、こちらは組織委員会より「東京2020応援文化オリンピアード」の認証を受けています。また、既存のさまざまな文化事業を文化プログラムにつなげていこうと考えています。まさに今週末は、プロジェクションマッピング国際コンペティション「にいがた★MINATOPIKA 2016」、江戸時代の町衆の踊りを若者たちが復活させた「2016にいがた総おどり祭」、信濃川の水辺空間を市民に楽しんでもらう「まちなかアウトドア」の3事業をトライアングルイベントと名付けてシルバーウィークに集中的に展開します。こうした動きにも積極的に冠をつけながら広く発信し、市民の活力に光を当てていきたいと考えています。
平成28年度文化庁委託事業 劇場・音楽堂等基盤整備事業"情報フォーラム"
開会挨拶
基調報告
パネルディスカッション
- 東京都が主導する文化プログラムの考え方と取組み
- アーツカウンシルの設立に向けた新潟市の取り組み
- 障害者プログラムの考え方と事例
- 文化の力による心の復興事業 2~3の事例から
- 地方劇場における文化プログラムの考え方