平成29年度文化庁委託事業 劇場・音楽堂等基盤整備事業"情報フォーラム"
「劇場・音楽堂等と地域文化創生」

基調報告 「文化政策の動向と今後の展望について」

藤原 章夫
文化庁文化部長

文化庁は来年の創設50周年を控えて、いろいろな意味で節目にさしかかっています。まず、新「文化芸術基本法」の成立を受けて、従来の文化の幅をさらに広げて政策を展開します。また、平成30年秋以降に予定されている京都への本格移転に向けた手続きも着々と進んでいます。さらに、東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会を一つの契機として、戦略的にさまざまな取組みを行っていきます。

(1)今般の「文化芸術振興基本法」の改正(平成29年6月23日公布・施行)について

  1. 趣旨
  2. 第一に、「従来の文化芸術の振興にとどまらず、観光、まちづくり、国際交流、福祉、教育、産業その他の各関連分野における施策を法律の範囲に取り込む」という点が大きなポイントです。第二に、「文化芸術により生み出されるさまざまな価値を文化芸術の継承、発展及び創造に活用する」としており、この二つがサイクルとして回ることが大きな眼目です。

  3. 総則
  4. 文化芸術団体の役割、関係者相互の連携及び協働について、さらに「年齢、障害の有無または経済的な状況」にかかわらず等しく文化芸術の鑑賞等ができる環境の整備も改めて明記されています。

  5. 文化芸術推進基本計画等
  6. 新法に基づく基本計画の策定が文化審議会でスタートし、今年度中に計画(5年間)をつくる予定です。

  7. 基本的施策
  8. 「食文化」が追加され、「海外における文化発信で現地の言語による展示、公開」などが書かれています。

(2)最近の政府の重要方針における文化関係の主な記述

「未来投資戦略2017(平成29年6月9日閣議決定)」として、産学官連携による文化芸術資源の活用を通じた地域活性化・ブランド力向上やコンテンツを軸とした文化の社会的・経済的価値等の創出、「稼ぐ文化」への展開等を謳っています。

(3)これからの文化行政:施策の展開(平成30年度要求)

文化庁の来年度の概算要求、機構定員の要求のポイントは次の3点です。

  1. 文化庁の機能を強化
  2. 新「文化芸術基本法」の制定を受けた文部科学省設置法の改正として、京都移転を見越した機構の改革を行います。まずこれまでの組織を見直し、「文化部」「文化財部」の二部性の廃止、各府省との協働がしやすい組織への抜本改変を行います。さらに、現場第一主義の原点に立ち、京都への移転を実施します。

  3. 文化政策の手法の多様化
  4. 文化芸術の枠を拡大し、多様な文化芸術資源を生かして社会的・経済的価値を創出していきます。また文化財行政の見直しを行い、従来の「文化財の保存・公開・継承」だけでなく、積極的な活用もあわせて推進していきます。

  5. 2020年とその後を見据えた文化政策
  6. 千載一遇のチャンスである東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会を契機に、日本の文化政策、文化活動を大きく前進させていきます。

(4)文化庁移転の進め方

職員数では全体の約7割(250人程度以上)を見込み、移転先は京都府警察本部本館に決まりました。京都の文化庁本庁に長官及び次長を置き、国会対応、外交関係、関係府省庁との連携調整等に係る政策の企画立案業務及び東京で行うことが必要な団体対応等の執行業務を除く、すべての業務を京都で行う方向で検討しています。

(5)予算について

平成30年度の予算は、シーリング枠を超えて1,252億円(前年比20%増)を要求しています。国際文化芸術発信拠点形成事業(26億円)、戦略的芸術文化創造推進事業(20億円)などが盛り込まれています。

一方、予算執行状況調査(平成28年度)における劇場・音楽堂等活性化事業に係る指摘事項(抜粋)として、「申請時に目的に即した事業効果を適切に測る成果指標を設定させるなど、文化庁が適切に指導し、採択時にそれらを踏まえた審査が行われる仕組みにするとともに、効果検証、結果の反映を的確に行い、支援が有効に機能する仕組みとなるよう見直しを図るべき」との指摘がなされました。

(6)障害者に対応した劇場・音楽堂等に係る課税標準の特例措置創設の要望

バリアフリー対策を行っている民間の劇場・音楽堂等について固定資産税・都市計画税を2分の1に軽減するという内容です。2020年を迎えるこの機会にバリアフリー化推進の一助となることを願っています。

(7)劇場・音楽堂等を核とした取組み事例

いくつか、非常に活発に活動されているケースを紹介します。

  • 可児市文化創造センター(岐阜県可児市)
  • 地域のさまざまな活動に精力的に取り組み、公民館や福祉施設で年間400回以上のワークショップを実施。高校などで演劇的手法を用いたワークショップで中途退学者の減少に貢献しています。

  • 兵庫県立芸術文化センター(兵庫県西宮市)
  • 阪神淡路大震災からの復興のシンボルとして、年間の公演入場者数約50万人を集客。関西の住みたい街ランキングの向上に貢献しています。

  • 北九州芸術劇場(福岡県北九州市)
  • 開館後の延べ利用者数が281万人を超え、観光的な視点でも貢献しています。

  • 河口湖ステラシアター(山梨県富士河口湖町)
  • 町外からの来場者が約85%で、交流人口と居住人口増加に寄与しています。

こうした取組みの成果をうまく数値化し、見える形で提示していく必要があります。

(8)文化プログラムの位置付け

「東京2020公認文化オリンピアード」「東京2020応援文化オリンピアード」「beyond2020プログラム」の枠組みのうち、「beyond2020プログラム」は「2020年以降を見据えて日本の文化の魅力を発信する取組み」と「共生社会を実現する取組み」の二つを満たすことが認定要件となっています。手続きも簡易ですので、各地域でもぜひ進めていただきたいと思います。「文化情報プラットフォーム」による情報発信も行っています。

東京大会ではロンドン大会を上回るレガシーを実現できるよう、皆さまのお力添えをお願い申し上げます。

平成29年度文化庁委託事業 劇場・音楽堂等基盤整備事業"情報フォーラム"

開会挨拶

基調報告

文化政策の動向と今後の展望について

講演

  1. 2020年に向けた文化情報発信のあり方
  2. 文化庁京都移転と地域文化創生

パネルディスカッション

  1. 公共文化施設は誰のため、何のため
  2. 転換期の日本の文化政策に劇場・音楽堂等はどのように貢献すべきか
  3. 人と人との交流を基本とする劇場・音楽堂等の新しいあり方

意見交換・質疑応答

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