平成27年度「劇場・音楽堂等施設改修相談会」
3.特定天井の改修と定期調査報告制度について
塩入 徹
日本耐震天井施工協同組合(JACCA)
技術委員長
平成26年4月、建築基準法では特定天井の構造方法が決められ、平成27年4月には既存建築物の定期調査報告制度も大きく変わりました。天井脱落対策の対象となる「特定天井」とは、6m超の高さにある、面積200㎡超、質量2kg/㎡超の吊り天井で、人が日常利用する場所に設置されているものです。新築建築物等の特定天井は、仕様ルート、計算ルート、大臣認定ルートのいずれかを適用して検証することが定められています。既存建築物については、常時適法な状態に維持するよう努め、特殊建築物等の特定天井については定期的に調査・報告することが定められました。さらに迅速な避難が困難となる固定された客席を有する劇場等は「住宅・建築物安全ストック形成事業(補助事業)」で天井の耐震改修が推奨されています。
定期調査の結果は建物の所有者、管理者、占有者が特定行政庁に報告します。調査の内容を気にしていない所有者、管理者、占有者が多いようですが、自治体の定期調査の報告書はインターネット等で公開されることもあります。所有者・管理者・占有者の修繕の責任が問われる時代になっているのです。
特定天井の定期調査については、例えばナットの脱落やクリップ等の外れ、大幅な緩みなどはすぐに気づきますが、法律で定められた各部材の微妙な緩みなどは、天井の構造や施工方法、使用部材について詳しく知らなければ正しい調査、診断はできません。定期調査を行っている建築士でもわかっていない人は大勢います。
また、法律では天井材の確認が定められていますが、天井の吊り元となる支持構造部の確認までは書かれていません。しかし、日本建築防災協会から出ている定期調査業務基準では、調査範囲を拡大して支持構造部の錆やたわみまで確認することになっています。正確に点検するには、天井材や支持構造部について、きちんと理解している人に依頼する必要があります。
天井の耐震改修については、国土交通省住宅局監修の『天井の耐震改修のススメ』という冊子に主な事例が4つ掲載されています。それぞれの改修方法は以下の通りです。
- 撤去…音環境、温熱環境に考慮した上で直天井のままで対応
- 撤去して耐震天井を新設…建築基準法に適合する耐震天井
- 撤去して軽量柔軟な天井を新設…軽いので遮音天井はできない。体育館に多い。
- 撤去して建物と天井を一体化…天井を吊らずに直張りする。複雑な形状の文化施設に適している。
改修には、既存の天井を撤去するほか、ネット張りや補強という方法もあります。
天井下地材の接合に使用するドリルねじや天井板を下地に留めるボードビスについては、現在、品質が証明でき、構造検討に使用できるJIS規格に適合したビスは市場にほとんど出回っていません。天井の構造設計の際は、低価格な規格外のビスではなく、JIS規格品を用いた設計をして頂き、設計されたビスと同じものが現場に納材され、そのビスで施工されていることをご確認頂きたいと思います。