改修相談
施設の長寿命化について
6-1 個別施設計画(インフラ長寿命化基本計画)とは何か。
我が国のインフラが今後急速に老朽化することが予想される中、国は平成25(2013)年11月29日、国及び地方公共団体等が管理するあらゆるインフラを対象に、「インフラ長寿命化基本計画」を策定しました。これは厳しい財政状況の下で、今後見込まれる膨大な老朽施設の再生(改修や維持管理等)を効率的・効果的に進め、トータルコストを縮減・平準化するためのものです。
同計画において、各インフラを管理・所管する国や地方公共団体が「インフラ長寿命化計画(行動計画)」を策定すること、また、同計画に基づき、個別施設毎の具体的な対応方針を定める計画として、令和2(2020)年度中に「個別施設毎の長寿命化計画(個別施設計画)」を策定することが定められました。なお、各インフラの管理者がすでに同種・類似の計画を策定済みの場合は、当面、それをもって、個別施設計画の策定に代えることができるが、基本計画の趣旨を踏まえた見直しを早期に行うことなどが努力義務となっています。
国土交通省 インフラ長寿命化基本計画
文部科学省インフラ長寿命化計画(行動計画)
6-2 文化施設も個別施設計画を策定しなくてはならないのか。
文部科学省は、施設の長寿命化に向けた各設置者の取組を推進するため、平成27(2015)年3月に「文部科学省インフラ長寿命化計画(行動計画)」を策定しています。それによると、公立文教施設(公立学校施設及び公立社会教育施設)は、1970年代前半の第2次ベビーブーム世代に対応するために整備されたものが多いことから、老朽化が進行していることなどが示されていますが、1980〜90年代に急増した劇場・音楽堂等の文化施設もまた、急速な老朽化や東日本大震災後の建築基準法の改正による特定天井の改修の義務付け等の課題を抱え、計画的に改修や維持管理を行う必要性に直面しています。
その状況下、地方公共団体では劇場・音楽堂等の施設毎の劣化状況を把握し、その施設で今後必要となる改修や維持管理費等のコストの見通しを明らかにする「個別施設計画」を策定し、これに基づき戦略的な維持管理・更新等を推進していくことが求められているのです。
文部科学省インフラ長寿命化計画(行動計画)
文部科学省 インフラ長寿命化計画(行動計画)の策定について(通知)
6-3 施設の長寿命化には、どのように取り組めばよいか。
文部科学省大臣官房長からの通知(平成27年3月31日付26文科施第569号)によると、各インフラの管理者は、下記のような手順で施設の維持管理、長寿命化等に適切に取り組むこととされています。
①メンテナンスサイクルの構築
対象施設について定期的に点検・診断を行い、その結果等を踏まえた計画を策定し、計画に基づく日常的な修繕や大規模な改修等を、厳しい財政状況の中でも着実に実施するメンテナンスサイクルを構築する。それにより、これまでの改築中心から長寿命化への転換を図り、中長期的な維持管理等でトータルコストの縮減及び平準化を図る、など。
②点検・診断の着実な実施
建築基準法上は「12条点検」(*)が義務付けられていない施設についても,当該施設の設置者においては,12条点検の点検内容も踏まえ,建築基準法第8条に基づく管理施設の維持管理を着実に実施する。
③「インフラ長寿命化計画(行動計画)」「個別施設毎の長寿命化計画(個別施設計画)」の策定
④対策の着実な実施
「個別施設計画」に基づき,計画的かつ着実に対策に取り組む。
*12条点検
建築基準法第12条及び関連政省令・告示等により規定される損傷、腐食その他の劣化の点検
文部科学省 インフラ長寿命化計画(行動計画)の策定について(通知)
建築基準法
総務省 公共施設等総合管理計画
6-4 メンテナンスサイクルの構築に、劇場・音楽堂等はどのように取り組めばよいか。
各施設の点検・診断→計画の策定→対策の実施を繰り返すメンテナンスサイクルの構築にあたっては、各施設の特性や維持管理・更新等に係る取組状況等を十分に踏まえる必要があるため、施設の管理・運用にかかわる担当者の協力が不可欠となります。施設の長寿命化を着実に進めていくための基礎情報として、定期的な点検・診断で得られる老朽化についての情報を正確に把握することが重要となりますが、劇場・音楽堂等には、他の公共施設にはない音響・照明・舞台機構等があるため、まずそうした設備を含めた現状や劣化状況の把握が必要となります。
さらに、点検・診断結果に基づく対策だけでなく、耐震化の安全対策、多様化する事業内容等のソフト面への対応状況や、バリアフリー化、エコ化など公共建築物として求められる現代的な性能への対応状況についても、この機会に確認して優先順位を設定し、適切に機能向上を図っていく必要があるでしょう。