改修相談

資金調達や事業手法について

3-1 大規模改修の際に民間資金・ノウハウを活用するPPP、PFIとは何か

PPPとは何か

改修が大規模なものになるほど必要な資金は多額となり、資金調達が重要な課題となります。従来の予算の枠内、あるいは国などからの補助金では賄えない場合、いわゆるPPPやPFI、クラウドファンディングなど、民間資金の活用を検討することが有効となります。
平成11(1999)年の PFI(Private Finance Initiative)法施行以来、我が国でも、文化施設の設置においてPFIやPPP(Public Private Partnership)を活用する事例が増えてきました。
PPPとは、民間の資本やノウハウを活用し、公民が連携して公共サービスの提供を行う枠組みの総称です。民間の事業者が公共事業の計画段階から参画し、施設の設計・建設から運営・維持管理まで受託するなど、官と民が連携して公共事業を実施する手法で、PPPの中には、PFI、指定管理者制度、市場化テスト、公設民営(DBO等)方式、さらに包括的民間委託、自治体業務のアウトソーシング等も含まれます。

PFIの考え方とは?

PFIとは公共施工等の設計、建設、維持管理及び運営に民間の資金とノウハウを活用する考え方です。公共サービスの提供を民間主導で行うことで民間の資金、経営能力、技術的能力が活用でき、国や地方公共団体等が直接実施するよりも効率的かつ効果的な公共サービスの提供、国や地方公共団体の事業コストの削減をめざす手法です。
PFIの基本原則の一つにVFM (Value for Money)があります。VFMは、一定の支払に対し、最も価値の高いサービスを提供するという考え方で、公共サービス提供期間中にわたる国及び地方公共団体の財政支出の軽減が図られ、あるいは、一定の事業コストの下でも、経済・社会への変化に対応した、より水準(質・量)の高い公共サービスの提供が可能となることが求められています。
PFI事業による公共サービスの提供は長期にわたるものであり、事業が開始された後の維持・管理やモニターリングがVFMを計る大きな要素となりますので、重視しなければなりません。

PFIの類型と改修スキーム

PFIの事業方式を、施設所有権が民間事業者か公的セクターのいずれにあるか、またその所有権の移転時期の違いで分類すると、BOT、BTO、BOO等に分けられます。
「BOT(Build Operate Transfer)」とは、民間事業者が施設等の建設とその後の維持・管理及び運営サービス提供をして自治体側が契約期間中はサービスを購入し、契約期間終了後、施設の所有権が自治体側に移転される方式。「BTO(Build Transfer Operate)」とは、民間事業者が施設を建設した後、所有権はすぐに自治体側に移転され、契約期間に民間企業が維持・管理及び運営サービスの提供を行い、その対価を受け取る方式。「BOO(Build Own Operate)」は、民間事業者が施設を建設・維持管理・運営し、契約期間終了後も民間が施設を所有し続ける方式です。
PFIの改修工事版である「RO(Rehabilitate Operate)」は、既存施設を民間事業者が改修し、その管理・運営も行う方式で、所有権は自治体のまま移転しないことが一般的です。
以上のほか、平成23年のPFI法改正により新たに導入された、施設所有権を公的セクターに残したまま運営権を民間事業者が購入し、事業の運営により料金収入を得るコンセッション(公共施設等運営権)方式もあります。 改修工事のスキームには、設計、工事、監理を別々に発注する「従来法」、設計監理と工事を一括して一つの事業者に発注する「DB(Design Build)」、施設運営を含めてコンソーシアム(共同事業体)に発注する「DBO(Design Build Operate)」がありますが、PFIを活用しSPC(特定目的会社)に発注する改修工事スキームが「RO」になります。

3-2 PPP、PFIなどで改修した例を知りたい

PFI、PPP導入及び施設複合化の実例

PFI導入の例としては、「杉並公会堂」(2006年供用開始)があります。杉並公会堂は国内では初のBOT方式のPFI事業で建設された公共ホールで、維持管理・運営期間は約30年間で、2036年の事業期間終了後は所有権が杉並区に移転します。同様の例としては、「稲城市立iプラザ」(2009年供用開始)等があります。
一方、いわき市の「いわき芸術文化交流館アリオス」(2008年供用開始)、府中市の「ルミエール府中」(2007年供用開始)、「静岡市清水文化会館 マリナート」(2012年供用開始)、「ホルトホール大分市民ホール」(2013年供用開始)、「横浜市戸塚区民文化センター さくらホール」(2013年供用開始)では、BTO方式で実施されています。また、所沢市民文化センターでは、PFI手法により、大規模改修後公立文化施設では初の大臣認定を目指した特定天井改修工事が行われています。
さらに、施設改修及び複合化を実施した「立川市子ども未来センター」(2012年供用開始)の例があります。同センターは旧市役所を改装した子育て、教育、市民活動、文化芸術活動、地域の賑わいづくりを行うための複合施設ですが、構想段階から実運営まで民間側のアイディアを受け入れるPPP方式を採用することで、立川市民の多様なコミュニティ・プログラムの拠点となるとともに、施設内の「まんがパーク」設置により、収益と集客の両立に成功するなど、多くの実績を上げています。

3-3 補助金制度について知りたい

改修資金に関する補助制度にはどんなものがあるか

天井の改修およびエレベーター・エスカレーターの改修に関する補助制度には、平成22(2010)年に創設された「社会資本整備総合交付金」と平成24年に創設された「防災・安全交付金」があります。

出典:国土交通省ホームページより一部抜粋

防災・安全交付金には、「住宅・建築物の耐震改修等に対して助成を行う事業」として、「住宅・建築物の最低限の安全性の確保を図るため、住宅・建築物の耐震性の向上に資する事業、住宅・建築物のアスベスト対策に資する事業又は危険住宅の移転を行う事業に対して、地方公共団体等に助成を行う」とあります。
平成25年度当初予算からは、天井のみの耐震改修、既設エレベーターの防災対策改修も同事業の支援対象として追加されました。

社会資本整備総合交付金事業 社会資本整備総合交付金交付要綱 附属編 国費の算定方法より

イ-16-(2) 住宅・建築物安全ストック形成事業に係る基礎額
5 建築物の耐震改修,建替え又は除却に関する事業(抜粋)
二 建築物の耐震改修工事費は、次に掲げる額を限度とする。

  • (2) 天井の耐震改修工事費については、31,000円(ネット等による落下防止措置を行う場合は13,400円、構造計算が必要な天井の耐震改修を行う場合は70,000円とし、平均天井高が10mを超える場合にあっては、高さ3m毎に3,090円を加算し、屋根面の耐震改修工事と併せて実施する場合にあっては、9,290円を減ずる。)に天井面積を乗じた額を限度とする。

10 エレベーターの防災対策改修に関する事業(抜粋)
二 エレベーターの防災対策改修に係る工事費は6,110,000円に当該工事を行うエレベーターの台数を乗じた額を限度とする。

11 エスカレーターの脱落防止措置に関する事業
二 エスカレーターの脱落防止措置に係る工事費は2,570,000円に当該工事を行う江須賀レターの台数を乗じた額を限度とする。

詳しくは国土交通省のホームページ「社会資本整備総合交付金等について」をご覧ください。

耐震対策緊急促進事業による補助金

また、平成25年11月及び平成31年1月に「建築物の耐震改修の促進に関する法律(平成7年法律第123号)が改正され、一定の建築物等に対し、耐震診断が義務付けられることになりました。
「耐震対策緊急促進事業」は、耐震診断を義務付けられた建築物の所有者である民間事業者が実施する耐震診断・補強設計・耐震改修に対し、国が事業に要する費用の一部を助成するものです。

出典:国土交通省ホームページより一部抜粋

耐震対策緊急促進事業には

  1. 地方公共団体に補助制度が整備されておらず、国が単独で直接的に補助をする場合
  2. 地方公共団体に補助制度が整備されており、地方公共団体と国が併せて補助する場合

の二つのタイプがあります。
当該建築物に対する耐震改修の補助制度が未整備な市区町村の区域内に所在するもの等について、国が直接的に耐震化に係る取り組みを支援することとしています。
地方公共団体に補助制度がある場合は、地方公共団体の補助制度と併せて活用することで、耐震診断等の補助率が高くなるよう措置されています。
劇場においては、昭和56(1981)年5月末までに着工された階数3以上かつ5,000m²以上の規模のものが耐震診断の必要な「要緊急安全確認大規模建築物」に指定されます。
耐震診断の結果、耐震基準に適合していないとされた場合、耐震改修の実施については努力義務となります。
なお、上記条件に当てはまらない規模の劇場でも「要安全確認計画記載建築物」として自治体に指定され、耐震診断の報告を義務付けられている場合があります。
詳しくは「耐震対策緊急促進事業実施支援室」のホームページをご覧ください。

公共施設最適化事業債等の創設

地方公共団体が、公共施設の老朽化の状況や人口減少・少子高齢化等の現状を踏まえ、公共施設の最適配置を実現するために公共施設の集約化・複合化や転用を進めていくにあたり、地方公共団体におけるこれらの取組を後押しするため、平成27年度から新たな地方債措置が創設されました。地方公共団体が、公共施設等総合管理計画に基づき実施される事業であって、既存の公共施設の集約化・複合化を実施するものに対し、新たな地方債(公共施設最適化事業債)を充当。また、既存の公共施設等の転用事業について、新たに地域活性化事業債の対象とします。
令和3年度まで適用されます。
詳しくは、総務省のホームページ「公共施設等総合管理計画」をご覧ください。

出典:総務省ホームページより一部抜粋

施設改修で利用できる地方公共団体の補助金

国の補助金と併行して地方公共団体の補助制度が整備されています。
詳しくは(一財)日本建築防災協会のホームページに都道府県の耐震改修促進計画・支援制度についての情報が掲載されていますので、確認をすることをお奨めします。
その他、冷凍機、ボイラー、空調機、LED化など、省エネに関する補助金も利用可能です。環境省の補助金等については、下記のページに紹介されています。
環境省 地方公共団体・事業者向け支援事業
地方公共団体側で予算を確保しても、国の補助金が取れないと、予算面で苦しくなることも想定されます。各省庁への補助金申請と予算取りを併行して進めることをお奨めします。

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