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企画委員ご挨拶

研修会企画者としての自問

世界で猛威を振るった新型コロナウィルスによる自粛生活から人々の暮らしはやっと日常を取り戻したかに見える。しかし、世界に目を向ければ、戦争だらけの世界である。ロシアのウクライナ侵攻やイスラエルとパレスティナの争いにより、日々両国の罪のない人々の命が奪われている。
芸術・文化は平和な中にこそ輝く。ウクライナのバレエ団公演でダンサー達が表現した平和への願いを、芸術・文化に携わる私たちは自分事として受け止められるか。
研修会企画者としては、この研修会に多くの方が参加して、何かを持ち帰ってもらうことを願っている。しかし、提供したプログラムが本当に参加者の求めるものとなっているであろうか。ネットを検索すれば、アートマネジメントの専門的な知識は溢れている。しかし、知識を獲得するだけではなく、研修会に参加することで、今後の仕事を進めていくうえで、自己変容の機会となってもらえれば企画者としての最低のミッションは達成されたのかと思う。

(公社)全国公立文化施設協会 アドバイザー
木全 義男

謙虚なリーダーシップ ―みんながリーダーの時代へ―

コロナ禍を経て公立文化施設を取り巻く環境はより一層激しさを増しています。時代の変化に呼応し社会の中に息づく劇場として、次代を担うリーダーはどのような行動や対応を求められるでしょうか。また、リーダーとしての資質をどのように育んだらよいでしょうか。リーダーシップ理論の研究は1930年代頃から活発ですが、リーダーシップ行動は、時代の変遷と共に変容しています。過去には、扇動型、利己型、欺瞞型、偽善型、トップダウン型など一人の強力なリーダーが支配と強制の関係をテコに隆盛しました。リーダーに一時的な先導が認められたとしてもこれからの組織運営は、一人に依存しない組織をどのように構築するかが喫緊の課題と考えます。すなわち、リーダーシップとは、リーダーとの関係性において成立する行動と捉えてよいでしょう。劇場には「ミッション」があるように、リーダーには「ビジョン」が必要です。自身のキャリア形成やキャリアパスを視野に組織コミュニケーションの観点から「謙虚なリーダーシップ」について考えましょう。

(公社)全国公立文化施設協会 アドバイザー
柴田 英杞

「なくてはならないもの」

4年に及ぶコロナ禍は、私たちに大切な気づきを与えてくれたと感じています。当初、劇場・音楽堂は「不要不急」に分類されてしまいましたが、市場原理で区別する「必要なもの」と「不要不急のもの」との分類とは別に、人間には、「なくてはならないもの」があることに気づかせてくれました。緊急事態宣言による休館が明け、劇場が再開した時に来場したお客様の喜びの声は、私たちに、劇場が信頼できる人間関係や安心できる場所と同様に、「なくてはならないもの」だと確信させてくれました。
新年に起きた大規模地震などから、劇場・音楽堂等は今、さらなる安全安心への備えや2024年問題への対応など課題が絶えません。そのような状況の中、このアートマネジメント研修会を通じて劇場運営にかかわる一人ひとりが、人間にとって「なくてはならない」仕事に誇りを持ち、同じ目標を持つ仲間と一緒に考え、学ぶことによって、劇場をさらに豊かな場所にしていってくださることを期待しています。

(公財)東京都歴史文化財団 東京芸術劇場 副館長
鈴木 順子

クリエイティブ人材と公立文化施設

生成AIに、今後人間の仕事で残るのは何かと聞いたところ、「改善、創造、交渉」の分野と答えたという話があります。これらの仕事を担うのはクリエイティブ人材ですが、今の日本の教育はまだまだ知識の習得と設問への模範解答を導き出す学習を基本としており、そのような人材を育成するためのプログラムは限られたものとなっています。翻って、公立文化施設の事業は、優れた文化芸術に触れ感性を磨き、参加体験事業でコミュニケーション力と非認知能力を引き出し、創造事業で独創的な地域文化を発信していく、まさにクリエイティブなコンテンツがぎっしり詰まった内容であり、公立文化施設はこれからの社会が求める最も重要な公共財だと言っていいでしょう。
劇場法の前文にある「個人を含め社会全体が文化芸術の担い手であること」は、国民一人一人がクリエイティブ人材を目指そうという示唆のようにも読み取れます。そして、「新しい広場」「世界への窓」は、それらの人材が紡ぎ出す人と地域を豊かに活性化するためのプラットホームであり、そこから「地域コミュニティの創造と再生」のさまざまな活動が生まれていくというイメージが浮かび上がります。本研修会が、そのようなイメージを共有し膨らませていくための機会になることを心から願っています。

(公社)全国公立文化施設協会 コーディネーター
水戸 雅彦

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