平成27年度「劇場・音楽堂等施設改修相談会」

個別相談会 相談内容2 舞台設備

回答者
(有)空間創造研究所代表
(公社)全国公立文化施設協会アドバイザー
草加叔也

魚沼市小出郷文化会館名誉館長
(公社)全国公立文化施設協会事務局参与
桜井俊幸

設備更新の優先順位はどうつけていけばよいか。

最優先すべきは、人身事故が起きないこと。舞台機構のワイヤーロープや迫りの不具合は大きな事故につながることが多い。迫りに安全装置がついているか、落下防止ネットがついているか、奈落の乗込み口に手すりがついているか、それらがきちんと動くかどうかの点検も含め、舞台機構の改修は優先する。
次に優先するのは、公演中止に至るような事故を防ぐこと。例えば、舞台照明の制御盤の部品ひとつひとつには耐用年数がある。小さな装置だが、部品が1個壊れただけで舞台照明がつかなくなるし、舞台照明の制御盤は経年劣化によって突然ブレーカーが落ちることがある。過去の事故履歴を調べ、経年数から安全性を考えたり、操作性能や今日的な演出の可能性も考えたりして、メンテナンス事業者と情報交換をしながら更新・改修を進めるとよい。計画立案にあたっては、過去の改修履歴を金額面も含めて整理した表をつくるとわかりやすくなる。

市町村合併によって重複した公立文化施設を、今後、集約する方針である。集約にあたっては、既存ホールを残すか新規ホールを建設するか検討中であるが、このような状況で中長期計画を立案するにあたり、資料収集や調査をどのように行っていけばよいか。

劇場・音楽堂等施設を能動的に使う市民は圏域住民の2~3割といわれる。意見の聞き取りは市民全体からではなく、まずは、その施設のヘビーユーザー(文化団体やプロモーター、舞台技術者等)から行うのがよいだろう。ヘビーユーザーや外部の委託業者の中には近隣施設の舞台設備の改修動向に詳しい人もいるので、その状況をヒアリングしてまとめていったり、ホールの管理運営者がユーザーから日常的に受けている要望を整理したりする方法もある。
そのように資料を揃えたら、自治体の営繕課とも協力しながら改修の方向性を考え、専門の事業者等に依頼して改修経費を見積もってもらう。その概算金額をもとに優先順位をつけていくことになる。
自治体としては、まずは総合計画をしっかり組み立て、改修の優先順位なり、新築するなりの方針を明確に打ち出していく。方針を決める際には、行政だけで行うのではなく、市民と協働して今後の文化施設やそのミッションを明確化していくとよいだろう。
また、市民による話し合いの上位に改修計画策定委員会をつくり、市民の意見を吸い上げながら最終的にはその専門委員が取りまとめていくという、二重構造で計画を進めることも多い。

中長期計画の理想的な手順を整理するとどうなるか。

最初に考える重要なポイントは、閉館を伴う改修になるかどうかである。閉館の場合も、全館閉館にするか、ひとつのホールだけ閉める部分閉館にするか、などが考えられる。
中長期計画の大きな流れは、①調査をする、②計画を立てる、③工事をする、④習熟訓練をする、というもの。この4段階を経なければ、開館に至ることはできない。
なお、ホールの設備だけ改修しても市民にはどこが新しくなったかわからないため、改修の内容をわかりやすく解説したパンフレットやチラシ等を配付したり、それらを掲示したりして理解を求めるとよい。また、市民ニーズの高い、目に見える改修も併せて行うと市民の理解を得られやすくなる。

設備更新の業者選定を入札で行う場合のリスクと、考え方のポイントを教えてほしい。

吊物機構等の施工にあたって改修の入札を行うと、すでに設置されている機構とは異なる業者の機構や部品が混載する可能性が生じる。異なる業者の機構や部品が混載すると、今まで通り動かなかった場合の責任の所在が曖昧になり、管理運営担当者は対応に困るだろう。メンテナンス時や故障発生時にも、複数社を呼ばないと原因や修繕方法を明らかにできないことが起こることが懸念される。安全性、安定性に加えて即応性が求められる舞台設備の改修に当たって、このように複数社と契約せざるを得ない結果を招く業者選定は十分に検討する必要がある。
そのことから、安全性、メンテナンス、緊急時の対応の一元化という理由により、部分改修であれば随意契約も積極的に検討すべきである。随意契約ができない場合には、公示の条件づくりを工夫するとよい。経審のポイントの点数や同種の工事の実績を前提にすること、あわせてプロポーザル方式での事業者選定により、ある程度、責任ある業者を絞ることができる。

改修時の機種選定や仕様書のつくり方などについて、専門家からアドバイスを受けられる仕組みはあるか。

メンテナンス契約している事業者にどこを改修すべきかを聞く、近隣ホールの舞台関係者に相談にのってもらうなどの方法がある。また、文化庁委託事業として全国公立文化施設協会が実施する支援員派遣制度も利用できる。
専門家からアドバイスを受けるにあたっては、先にも述べた過去改修履歴の整理が必要である。さらに、メンテナンス事業者に、今後の10年間、どの時期にどういう改修が必要であるか、項目立てと見積もりを作成してもらうのもよい。

現在、舞台機構は電動バトンが主流なのか。

新築の劇場ではすべて電動にすることが多い。手動のオペレーションがきちんとできるスタッフが減っていることと、カウンターウェイトを載せ変えることの事故リスクを減らしたいという事情からである。演出用に使用する吊物設備は可変速にするのが一般的で、新国立劇場や東京国際フォーラムでは国内で最も早い分速120mのものを入れているが、市民会館クラスでは分速90mか60mのものが標準的である。照明ブリッジを少なくするのも最近の傾向だが、乗り打ちでの公演が多い劇場やオペラ・バレエなどを上演するホールでは、照明ブリッジを残した方がよいと考えるところが多い。最近では、照明ブリッジを任意の位置に吊り変えられる機能を備えた劇場も多くなってきている。

舞台照明のLED化について、1.5kW相当のLEDはまだ不安定だと聞いている。発注に際しての考慮点は。

舞台照明のLED化の流れは止められないが、現在は、ハロゲンとLEDでは色構成が全く異なり併用できないという問題があるし、調光速度も異なるため、1.5kW以上の器具はまだ十分普及しているとはいえない。
従来と異なりLEDでは調光器が不要となる点も、更新時に考慮すべき点である。というのは、施設規模にもよるが従来の調光器盤は更新に6000~7000万円かかることがあるが、現時点でその金額をかけて更新しても、10年後には完全にLED化されて、調光器が不要になる可能性もあるからである。それについて我々は、中継ぎとして移動型調光器を入れる方法を提案することがある。
LEDの導入にあたっては、LEDは寿命が長いために更新時期がわかりくいということも念頭におくとよい。我々は天井反射板ライトをLEDにしたときには、舞台を一定間隔のグリッドで区切って、ポイントごとに照度測定をしている。そして、例えば「照度が80%を切ったら更新する」などの目安を決めておくと、更新がスムーズになる。
また、LEDはDMXコントローラーを導入しないと0~100%までのスムーズな調光ができない点も要注意である。カーブ特性が悪く5%でパッと明るくなるような器具では、演出上、大きな制約を受けることになり、あとで後悔をすることが多い。価格的には高めでも、舞台では0~100%のスムーズな調光ができる器具でなければ使えないと考えたほうがよい。

改修休館中の職員の勤務体制は、どう構築すればよいか。

舞台設備や舞台機構の改修の場合、機器の選定や取り付け位置、舞台機構の操作仕様選定、舞台機構・照明・音響の略称統一など、発注以降に決めていくことも多々あり、そのような対応だけでも数名は必要になるので、改修工事の期間中も一定の職員数については雇用体制は維持できると考えられる。改修期間中に劇場として公演を全くしないか、アウトリーチのようなかたちで活動を行うかによっても状況は異なるだろう。東京芸術劇場や彩の国さいたま芸術劇場は、10人以上の技術スタッフ全員が、改修期間中も勤務を継続していたと記憶している。

平成27年度「劇場・音楽堂等施設改修相談会」

第1部

  1. 大規模改修のプロセスについて
  2. 舞台設備改修について
  3. 特定天井の改修と定期調査報告制度について

第2部(個別相談会)

  1. 老朽化対策全般
  2. 舞台設備
  3. 特定天井

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